「静ちゃんさぁ、何で俺をすぐに見つけちゃうわけ?」
ヒラリと、投げられた自販機を避けながら臨也は言った。
「あァ?」
いつもなら静雄は臨也の言葉に耳を貸さないのだが、この時の臨也はいつもの得体の知れないヘラヘラした笑みがなく、真剣そのものだった。
「だからさぁ、俺ってそんなに目立つの?静ちゃんて、すぐに俺を見つけるじゃん」
しかもペラペラとある事ない事をウザいくらい喋る臨也が余計な事を全く言わない。
静雄は内心で驚きつつも標識を臨也に向け、振り下ろす。
ヒョイと避ける臨也。
「…テメェはどう見ても目立つだろ」
「えー?どこが?」
「どこがって…」
標識を振り下ろす静雄。
それを簡単に避ける臨也。
臨也がペラペラ喋るのにキレた静雄が殺し合いをするいつもと違い、会話が成立しているのに違和感を覚えた静雄は、どうも殺す気が失せてしまい、標識を振り下ろすのを止めた。
標識を脇に抱え、こちらの返答をおとなしく待っている臨也をじーっと見つめる。
「…顔?」
そして思わず呟く。
臨也の顔がひきつった。
「あのね静ちゃん…、俺が言うのも何だけどさ。
もっと他にないの?」
「つってもなぁ…、何となーく分かんだよ」
静雄は自分でもうまく言い表せないらしく、苛立たしげに片手でガシガシと頭をかいた。
それを聞いた臨也は、どこかで聞いた情報を思い出す。
そしてその情報にそって静雄に質問してみた。
「ちょっと質問してもいい?」
念のために許可をとる。
静雄はいつキレるか分からないからだ。
静雄は訝しげに首を傾げたが、まともな事を臨也が喋っているため、頷いた。
「…俺が雑踏の中に居てもすぐ分かるの?」
「…おう」
「俺を目で探したりする?」
「? おう」
段々、質問の意図が分からない静雄が困惑してくる。
臨也は情報が当たり始めているのに、冷や汗を感じていた。
「これで最後だけど…さすがにないよね。
静ちゃんさ、俺の事とか考える時ある?」
臨也がそう言うと、静雄は眉を寄せてしばらく考えていたが、ついに口を開いた。
「たまに…あるな。
それがどうかしたのか?」
首を傾げて答える静雄。
それを聞いて固まる臨也。
情報は当たっていた。
だが、静雄の事だから違うだろうと臨也は思った。
「い、いや…別に。
あ、じゃあ俺帰るねー」
「あっ、おいコラ待て臨也!」
臨也は静雄の言葉に耳を貸さずに走った。
人混みに紛れ、追って来ないのを確認する。
そして歩きながら頭の中で情報を思い出す。
(雑踏の中でも分かって、目で探したり、考える時があれば…それは…恋?)
思わず立ち止まる臨也。
静雄が、自分に…恋?
(…だったら、いいのにね)
フッと悲しげに微笑して、臨也は再び歩き出した。
(…明日も池袋に行ってみようかな)
そう思いながら。
―――――――――――――――――――
あとがき
初の静←臨。
臨也たん乙女ですよ。
―――――――――――――――――――