時々、変な気分になる。
「はぁ・・・・・・」
米沢城内の廊下の縁側に腰を下ろし、白い空を見上げながら猿飛佐助はため息をついた。
彼が何故ここに居るかというと・・・、時は数時間前にさかのぼる。
越後での偵察任務をすまし、甲斐に戻ろうとした佐助だったが、
そこで突然の大雪に見舞われてしまった。
『うっわー、こりゃ帰れねぇわ』
吹雪の中、どうしようかと佐助が悩んでいると、
『なんでテメェがここに居る?』
村の畑の様子を見に来ていた片倉小十郎にばったりと出会ってしまった。
『いや、この大雪でちょっと帰れなくなっちゃってさー』
軽く佐助が笑って事情を説明すると、小十郎はしばらく考えるように沈黙し、
やがて口を開いた。
『・・・城に来るか?』
『・・・いいの?俺様、同盟国とはいえ他国の忍びだぜ?
それに独眼竜の旦那になんて言うんだ?』
『政宗様には俺から言っておく。
さっさとついて来い』
そう言って、小十郎はさっさと歩いて行ってしまう。
忍びである自分に、簡単に背を向けて。
『・・じゃ、お言葉に甘えますか』
佐助は一瞬だけ肩をすくめ、すぐに小十郎の後を追った。
別に急ぐ任務でもないし・・・、雪が止むまでくらいならいいっしょ。
そう思いながら。
そして現在に至るという訳である。
そろそろ雪は止み始め、もうしばらく待てば甲斐に戻れるだろう。
「・・・なんだかなぁ」
そう言いながら、佐助は両手で膝を抱える。
小十郎は仕事をするために自分の部屋に行った。
さっきまで佐助はその部屋に居たのだが、仕事の邪魔になるかと思い、
小十郎の部屋から出てここに来たのだった。
忍びの自分が近くに居ては仕事に集中できないだろうと、そう思ったのだ。
佐助は視線を前に戻し、隅々まで整然とした庭を眺めた。
なんか・・・変な気分だな。
無意識に佐助は膝を抱える両手に力を込めていた。
前にもこんな気分になった事があったな、と佐助は思った。
モヤモヤとした何かが、佐助の胸の内をザワつかせる。
なんだろうな、これ・・・。
そう思いながら、佐助は思わずため息をついて呟いた。
「・・・寒い」
「寒いのか?」
「え!?」
いつの間にか小十郎が背後に現れ、佐助をヒョイと膝に抱き上げてしまった。
驚いて佐助は固まってしまい、抵抗するのも忘れてしまっていた。
その隙をついて、小十郎は佐助を両腕で包みこむ。
「ちょ、右目の旦那・・・!?」
背中に小十郎のぬくもりも感じて佐助は真っ赤になって慌て、その腕から逃れようとしたが、
さっきまで自分の胸をザワつかせていた何かが消えている事にふと気づき、動きを止めた。
「・・・どうした?」
突然、抵抗をやめた佐助に、小十郎が不思議そうに聞くと、
佐助はおずおずと口を開いた。
「なんか俺様・・・、寂しかったみたい」
さっきまでの気持ちがなんだったのかが分かり、佐助は苦笑しながら言った。
何故こうも自分は安心してしまっているのだろうと思いながら。
「・・・そうか」
小十郎は静かにそう言うと、後は黙って佐助を強く抱きしめた。
時々、胸がザワつく時がある。
そういう時は、右目の旦那の所に行こうかな。
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あとがき
やっと更新できました。いががでしたでしょうか?
なんか佐助が可愛くなってしまい、書いてて楽しかったです。
誤字脱字がありましたらメールフォームにてご連絡を。
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